マタニティアクアってなんでしょう - 福岡スイミングクラブ

福岡スイミングクラブでは妊娠中の水中運動

「マタニティアクア」をおこなっています。

f:id:FukuokaSC:20190216165044j:plain — プレママもスイミング

本日は、マタニティアクアのご紹介です。

妊娠中に水中運動って？どんな良いことがあるのでしょう？

水中運動が安全で効果的な理由

妊婦さんが水中で安全に運動ができるのは、温水・浮力・水圧・水の抵抗・・・つまり水の特性が妊婦さんを安全に守っているからです。

安全

水中では、浮力が妊娠子宮（胎児）を上方へ持ち上げようと作用するため、子宮口は刺激されず、子宮収縮は起きにくい状態にあるといえます。一方、陸上での激しい運動は、予想以上の重力が妊娠子宮にかかるため、浮力が働き体が軽くなります。

胸の深さで体重の約3分の１、肩まで浸かると約10分の１の軽さになることがわかっています。

つまり、水中では、お腹の大きい妊婦さんほど浮力が増し、腰や膝に負担をかけないで安全に運動（水泳、散歩）が出来るのです。

水中運動の生理学的作用

水中では妊娠子宮（胎児）にも浮力が働くため、子宮収縮が起こりにくい。
温水中（30℃）では筋緊張が緩和し、水の抵抗にも守られて全身運動がしやすい。
水中では水圧がかかり、特に下肢から心臓へ戻る静脈血流を増やす。
温水中でのゆっくりした散歩は、抹消血管を拡張し血行を良くする。
利尿作用にすぐれているため、浮腫（むくみ）の予防と治療に著しい効果を示す。

陸上と水中での運動効果の相違点

水中運動の特徴は、体力アップはもちろんのこと、生理学的に抹消血管拡張作用と大きく異なる点です。陸上での運動は、上記に示した水中運動と反対の生理学的作用（上記1～５）を有しています。

妊婦水泳の効果

妊婦水泳は生活習慣の改善と体力向上を促し、妊娠中の便秘や肥満を解消し体調を整えるとともに、出産時には分娩時間を短縮するなど、予防医学的な役割と安産効果に大変優れています。

その他にも、静脈瘤・浮腫・腰痛症・便秘などの不快な症状の改善にも驚くべき効果を発揮します。

興味深いことは、この２５年間、妊婦水泳グループ（約5,000人）に重症妊娠中毒症・常位胎盤早産剥離が1例も発症しなかったことです。

その理由は、生活習慣の改善はもちろん、利尿作用、抹消血管拡張作用などの生理学的効果が妊娠中毒症の原因となる肥満・浮腫・血圧上昇・などの危険因子を防ぐことによって体調を整え、子宮内環境（子宮・胎盤）を、より正常化したためと考えられます。

水中散歩の魅力

妊婦水泳は、正常妊婦しかも泳げる妊婦さんが対象でした。この25年間、妊婦水泳の安全性と予防医学的な効果に注目し、妊婦中毒症や静脈瘤などの合併症をもった妊婦さんの予防・治療を目的に始めたのが水中散歩です。

水中散歩と妊婦水泳の違い

妊婦水泳は運動量が多いため脈拍が早くなり、血圧の高い妊娠中毒症の妊婦さんにはできないことでした。一方、水中散歩は脈拍、血圧への影響がなく、妊娠中毒症になりそうな妊婦さんの浮腫・高血圧の予防と治療に満足いく効果を発揮します。

逆子体操としての役割

水中散歩は、水の浮力が妊娠子宮（胎児）を頭方へ持ち上げようと働くため、逆子を直す『逆子体操としての役割』も期待できます。逆子体操は陸上ではお尻を持ち上げる胸膝位が一般的です。しかし、水中では浮力があるためお尻を持ち上げる必要はないのです。きつい胸膝位に比べ、水中で散歩を楽しみながら、自然に逆子を直す方法として、今後さらなる普及が期待されます。

f:id:FukuokaSC:20190216184521p:plain — 水中だと負担が少ない

その他の臨床応用

水中散歩の生理学的作用は、現代の生活習慣病（肥満、高血圧、腰痛症など）をはじめエコノミー症候群（血栓症）、睡眠時無呼吸症候群（SAS）などの予防と治療にも有効ではないかと考えます。なぜならば、前者は末梢血流の改善が、後者は肥満にともなう放射障害（うつ熱）の改善が、それらの予防と治療になると考えられるからです。空調機器にはフィルター掃除が必要であるのと同様に、人間の体（自立神経機能）を常に正常に作動させるためには、人間の血管にも時にはフィルター掃除（末梢血管拡張＋血流量の改善）が必要なのです。